夜は琥珀色 ~家飲みウイスキーのことなど~

しみじみとウイスキーのお話を

キリン 富士山麓 樽熟原酒50° (新旧富士山麓比較)

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昨年から商品構成の再編を進めていたサントリーやニッカに対し、主力商品であった富士山麓18年の終売ぐらいで静観の構えだったキリンがようやく動きました。キリンの主力中の主力である富士山麓を3/22にリニューアル新発売。それに伴い容量を以前までの600mlから700mlに増量、ただ価格も1,000円前後から1,500円前後とハネ上げたため実質的には値上げとなりました。

富士山麓のサイトではノンチルフィルタード製法を前面に押し出して質感の向上を謳ってはいますが、長らく1,000円ウイスキーの門番として地位を築いてきただけに、価格帯の階級を上げることは大きな賭けになります。ただでさえ販売ボリュームが出る低価格商品は収益を支える重要商品、その基幹商品の値上げは経営にインパクトを与えることは間違いありません。そんなキリンの覚悟が試されるリニューアル、旧富士山麓も手元にあったので比較してみました。

開封してみます。旧富士山麓より明らかに増した樽感、御殿場グレーンの上品な甘さが香り立ち、奥にキャラメルも感じられます。口に含むと50°とは思えないほどまろやかに、グレーンの角砂糖感やうっすらとアーモンドのような甘さも。余韻も樽感をメインにカラメル、ビターチョコがほどよく伸びます。富士山麓の特徴だった加水の伸びも踏襲、ロックで少しずつ融かしながら飲むとその変化を楽しめます。

ノンチル効果なのか香り立ちや余韻にはハッキリとした質感がありますね。旧富士山麓は味わいがわかりやすい一方で若さやドライさ、アルコール感も目立ちハイボールが主戦場でしたが、新富士山麓はロックやストレートでも楽しめる構成になっていると思います。以前から評価の高い御殿場グレーンの香りや味わいもより感じますし、単純に熟成の進んだ原酒の割合を増やしているのでしょうか、総合的には値段以上のクオリティがあると感じました。


【香 り】 上品な樽感
【味わい】 角砂糖、アーモンド
【余 韻】 樽感、ビターチョコ
【短 評】 やればできる子
【飲み方】 ロック

  

 

去年、キリンのブレンディングセミナーに参加した際の質疑応答で新商品の展開について訊いたことがあり、「計画してます、乞うご期待」的な回答だったのを思い出しました。さらに「一般販路だけでなく飲食業態でも面が取れてない、食事にも対応した商品の開発を」とか話した記憶があります。個人的に、この新富士山麓のロックやハイボールは食中酒としても活躍できると感じました。

とはいえ1,000円ウイスキーとしてトリスやブラックニッカクリア、ジョニ赤やバラファイあたりとしのぎを削ってきた富士山麓、今回の値上げによって角瓶を超えてオールドやブラックニッカディープブレンドあたりとの戦いに挑むことになるわけです。これはこれで困難な戦いになるとは思いますが、それに見合うクオリティは備えていると感じました。これからの富士山麓とキリンに要注目ですね。