夜は琥珀色 ~家飲みウイスキーのことなど~

しみじみとウイスキーのお話を

バランタインファイネスト(古いの)

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はい、月刊バランタインです。前回はブランドの主力17年でしたので、今回はマーケットの主力となるファイネストの1970年代頃のボトルでいきましょう。ファイネストは歴史あるバランタインのラインナップでも最も古く、1910年に発売が開始されました。日露戦争第一次世界大戦の間ぐらいの時期ですね。まだ日本には山崎蒸留所(1923年建設)もできていない頃から続く由緒あるブランドになります。

バランタインでいうと17年や30年はブランドを高める役割がある一方、このファイネストはマーケットを押さえて売上と利益を出し続ける役割があります。サントリーにおいても山崎・白州などのシングルモルトが占める売上は10%程度で、売上・利益の90%はブレンデッド、特に角瓶やトリスなどのエントリーボトルから生み出されると言われています。それぐらい事業を続けていく上でエントリーボトルはとても重要なんですね。

開封してみます。ドライフルーツ、煮詰めたハーブのような香りが。いわゆる、バランタイン臭というやつですね。口に含むとスムースに、濃いめのレーズンやナッツ、樽感が溢れてきます。アルコール感はさほど感じません。余韻は長く、アーモンドやトースト、ビターにミントが広がります。多層で落ち着きのある、よくできたブレンデッドだと思います。

ファイネストとはいえそこはバランタイン、ハーブのような香り、ナッツやレーズンを感じる味わいや余韻など、この頃の12年17年30年と共通するベースが確かにあります。消費者の嗜好も変化するので一概に優劣がつくものではありませんが、味わいの深さだけを見れば現行では及ぶべくもないものがありますね。まあ市場の拡大に対して原酒の熟成が追いつかないという点はどうなるわけでもないんですけど…


【香 り】 ドライフルーツ、ハーブ
【味わい】 レーズン、樽
【余 韻】 アーモンド、ミント
【短 評】 これもバランタイン
【飲み方】 ストレート、少しの加水

  

  

前述した通り、サントリーで言うところの角瓶、ニッカならブラックニッカにあたるのがこのファイネストです。侮るなかれ、市場性のあるエントリーモデルを作り出す重要さ、ありがたさはビジネスをしている方なら痛いほどわかるはず。ファイネストが世界的支持を得たからこそ1937年の17年の発売に繋がったのです。1910年の発売から100年超、まさに世紀を超えたベストセラーになるには理由があるということでしょう。

今回はオールドボトルの紹介となりましたが、現行のファイネストもよくできたウイスキーだと思います。よく行くバーでも「最近のバランタインのファイネストと12年は美味いよね」という評価です。100年を経てもなお、支持され続けるファイネスト。不断の努力には頭が下がる想いですね。